風が強く吹いている(三浦しをん)

風が強く吹いている (2006年 新潮社 三浦しをん著)

 

 

箱根駅伝をテーマにしたお話です。

 

必死になって想いを繋いでいくことが、

本当に素晴らしいと思える1冊。

 

そこまで、箱根駅伝が好きでなくても、

「あーお正月にやってるよね」くらいの知識でも

十分に楽しめる作品だと思います。

 

 

才能を持ちながらも、高校時代に不祥事を起こし、

長距離から遠ざかるように大学へ進学した蔵原走(かける)。

同じく、才能を持ちながら、故障に苦しんだ清瀬灰二(ハイジ)。

偶然とも運命とも言える出逢いから、

箱根駅伝とは程遠いような大学で、陸上部を立ち上げ、

彼らの寮である青竹荘の住人たちと

箱根駅伝へ挑むというストーリーです。

 

この本を読んだのは、まだ大学生の時でしたが、

昔から、箱根駅伝というものがとても好きだったので、

最初の部分での、

全く箱根駅伝を知らないような陸上経験浅い連中が、

いきなり箱根駅伝を目指そう、なんて設定がとにかく許せなくて。

 

いやいやいや、箱根ってそんなに甘くないから。

箱根をバカにしている!って思ってしまっていました。

 

ただ、読み進めて行くうちに思ったのは、

筆者が相当な取材を重ねた上に書いたのかなという、

最初の設定を忘れてしまうほどの

登場人物の成長と一生懸命な想いでした。

 

春先の結成から、夏場の訓練、予選会突破を経て

本選へと進んでいきますが、特に本選の描写なんかは、

読み応えがあります。

 

 

陸上競技の長距離、ではなく、

あくまで「箱根駅伝」をテーマにしたお話で、

箱根特有の「襷」を繋ぐこと、

想いを繋いでいくことの美しさが良く表現された作品だと思います。

 

限界ギリギリのところで、あるいはそれを超えてまで

必死になる姿とは本当に素晴らしいなと思います。

「一生懸命」って本当に美しいなって思うんですが、

それが、仕事であれ、スポーツであれ、音楽であれ、

人が何かに懸ける一生懸命な姿は、本当に美しい。

ただ、仕事とかと違って、スポーツの場合は、自分を追い詰めて行くのが、

精神的だけじゃなくて、肉体的にも限界なところまで行くから

(陸上の長距離はその傾向がより強い)

胸を打つほどの感動を覚えるのかもしれない。

 

 

陸上競技自体が、個人戦で、1人で挑むものだけれど、

長距離は、その「1人で戦う時間」がとても長くて、

それが駅伝にになると、チームができて、団体戦のように見えるけど、

でも、実際は同じコートで同時に戦える球技なんかと違って、

走り出したら襷つなぐまで、やっぱり1人の戦いなんですよね。

 

頑張るしかないし、信じるしかないって言う。

 

 

 

箱根駅伝自体が本当に素敵なものですが、

この「風が強く吹いている」は

箱根が好きな人が読んでも、

そこまで詳しくない人が読んでも、楽しめる作品だと思います。

 

箱根駅伝が楽しみになります。