青の炎(貴志祐介)

青の炎 (1999年 角川書店 貴志祐介著)

 

 

 

「問題作」というか、

読んでいて、とても苦しくて仕方のなかった1冊。

 

少年犯罪をテーマとしていますが、

おい、大人が何とかしてやってくれよ、ホントに。

と思ってしまうというか、

 

世の中で起きている全ての事件の裏側に、こんな背景があったら、

世界はとても苦しくて、悲しくて残酷だと思います。

 

 

主人公の秀一は、名門校に通う17歳。

母と妹と3人暮らしだったが、

ある日、かつて母が再婚をしていたものの、

暴力やその他の問題で別れたはずの養父が家に転がり込んでくる。

言動が暴力的で、母だけでなく、妹の体への危機を感じる毎日に、

家族の生活は疲弊し、崩れて行く。

 

秀一は大切な家族を守るために、

法的手段へと訴え、正当に養父を遠ざけようとする。

しかし結局は、未成年という理由だったり、その他の壁に阻まれ

失敗し、さらなる危機感が募る。

なんとしても家族を守りたい秀一は、

最終的に、養父を殺めるという、完全犯罪へと手を染める。

 

 

繰り返しだけど、

これだけ大人がいて、なんで助けてやれないんだよ、

と、やるせない気持ちでいっぱいになります。

 

彼の人生に、何かしてあげることのできなかった

社会の不甲斐なさ、というか、

重ね重ね思うけど、こんなことが本当におこっていたら悲しい。

 

(そもそも犯罪はあってはいけないという前提は別として)

やはり、犯罪者は悪いヤツじゃないと、

その犯罪自体の是非みたいな問題すらでてきてしまう。

犯罪者がただの極悪人ならすごく単純なのに。

 

 

ただ、このお話でさらに残酷なのは、

主人公秀一が最初に犯した犯罪から引き起こされた

もうひとつの犯罪。

これについては、擁護・弁解の余地はなく、

結果最悪の事態を招いてしまうけれど、

もう読んでいるこちらとしては絶句。

 

秀一は、すごく頭のキレる少年というか、

冷静で、理路整然としていて、

個人的にはとても好ましい言葉の使い方をするので、

こんな結果へと繋がってしまうことが残念。

また、普通の高校生のように、同級生と淡い恋愛があったり、

わずかな友情があったりして、

それすら少年の人生から奪ってしまったことで

さらに悲しさを加速させられます。

 

少年の人生の歯車を狂わせたのが大人で、

さらに、大人が何もしてやれないなんて、

クソすぎる。

 

 

そして、少年犯罪における、17歳っていうのはすごく難しい。

よく、更生可能性という観点からも語られるけれど、

何を期待しての更生なんだろう。

 

少年法は学生の時にややかじったので、

当時その存在について、

やっぱり10代の少年が、彼、彼女の足りない道徳観で

何か極めて重大な犯罪(特に殺人とか)を犯したとして、

やっぱり彼は(例として)20年後、それをひどく後悔するし、

「あの時は若かった」って罪を負いながら思うよ、

(それが更生ってこと、という意味で)

ということを話したら、友人から、

「そんなことを言ったらキリがない。22歳の少年だって、

20年経てば同じこと言うよ」

と言われて、返す言葉がなかったのを覚えています。

 

難しいよね、

少年側(少年だけじゃなくて大人も含めた加害者)の観点にたつと、

更生可能性というのはかなり重要だけれど、

被害者側から見れば、相手が子どもだろうが成人だろうが

その実、被害の程度は変わらないんだもの。

 

こういうことを考えだすとキリがない。

書き出してみても、答えなんて出たことがないです。

 

 

読んでいてつらくなるようなお話ですが、

作品としては本当に良くできていると思います。

たまには、難しいお話もいかがですか。