舟を編む

舟を編む (2011年 光文社 三浦しをん著)

 

 

 

「辞書」を編纂する出版社の部署のお話です。

 

語り手が数人いて、1冊の辞書を編纂し出版するまでの

ひとつの物語になっています。

 

おそらく主人公格にあたる青年がとても好ましい。

言葉を扱うにふさわしいというか、どこか古風で、

とにかく本が好きで、変わっています。

何気なく生活する中で、ふいに出てきた言葉、

例えば「あがる」と「のぼる」の意味を考えていたり。

 

この本を読んでいる途中、とにかく辞書が読みたくなりました。

辞書は本来、読むものではなく、

日常生活の中で、知らない言葉に出逢ったときに、

その意味を求めて「ひく」ものだと思うのですが、

この本を読み終えて、まず、辞書が読みたくなりました。

 

【語釈】という、辞書において、掲載の言葉を説明する文章。

ある言葉を説明するためには、

どうしても別の言葉を用いないといけない。

 

例えば、「女」とあった時に、

その語釈が「男でない方の性」とか

「右」を説明するときに「左の反対側」だったら足りないですよね。

その【語釈】ひとつひとつが、辞書によって、個性的でおもしろい。

いざ、気をつけて語釈を読んでみると結構笑えたりもする。

 

専門的な用語に関してはその分野の専門家や、学者に

執筆を依頼しますが、

それぞれの言葉で書いてくるので、統一しないと辞書として

成り立たない。

 

また辞書の最大の売りである、掲載用語数。

辞書を作る際に、どんな言葉を載せるか、

その何万にも及ぶ膨大な言葉の数をリストアップして、

採用不採用を決めていく。

 

普段、特に社会人になると忘れがちな辞書の存在、

その魅力を、存分に教えてくれる一冊でした。

 

どちらかと言えば辞書は好きなので、

学生の時なんかは、電子辞書より紙の辞書派で、

語学がある時なんかが第二外国語と足して2冊

(あと六法もあったから)

肩が取れちゃうんじゃないかって鞄を持ってたり。

ただ、最近は、知らない言葉に出逢うと、

ネットで調べちゃうことが多いので、

なるべく辞書をひきたいなと思いました。

もったいない。

 

もうひとつ、この本の素敵なところは、

人と人の間で、やりがいをもって働くことの素晴らしさを

良く書いているところかと思います。

それぞれ、想いを持って、時に自分の人生をかけるほど、

一生懸命に働くということ。

もはや、ただの「仕事」というより「ライフワーク」という

言葉の方がよく当てはまるかも知れません。

なんだかとても、かっこいい。

 

あと、三浦しをんさん、文章がとても美しいな、と思いました。

以前に読んだ「風が強く吹いている」もそうだったんですけど、

文章がとても美しいです。

わたしも割と古い方で、「ら抜き言葉」とか嫌だったり、

若い人が「わたしは」の「は」を「ゎ」とか書くの信じられなかったり、

「現実的に」のことを「リアルに」とか聞くと、

ちょっと背中がかゆくなる気がするくらいですが、

読んでいて心地の良い文章でした。

 

 

言葉が好きな人にはもちろん、

仕事をしている人にぜひ読んでいただきたい!