チルドレン(伊坂幸太郎)

チルドレン  (2004年 講談社 伊坂幸太郎)

 

家庭裁判所の調査官という、

非行少年を相手とする職業に携わる人たちが主人公の短編集。

 

ストーリー自体も、ものすごくおもしろいのですが、

登場人物のキャラが本当に良いです。

 

伊坂幸太郎さんの本は、

情景描写よりも登場人物のセリフによって表現することが多くて、

そのセリフ自体もすごく独特だから、

キャラは必然的に強調されてくるけど、

この本は魅力的なストーリーがあるにもかかわらず、

そのストーリーよりも登場人物のキャラの良さが魅力かもしれない。

 

短編の5つのお話から構成されていますが、その構成がとても独特。

5話全てに登場する陣内と言う人物、

彼がこの本全体の中心であることは分かるのですが、

各5つの短編の中で彼は、どれも主人公にはならない。

 

陣内の学生時代に、彼の友人の視点で描くストーリーと、

家庭裁判所の調査官になった陣内の、部下の視点から描くストーリー。

5話全てが、陣内のまわりの人間から見た彼と、

彼の周辺にまつわるストーリーになっています。

 

短編集なので、各1話ごとにそれぞれ事件があって、

ひねった展開がおもしろいのですが、

まったく関係ないように見えて、実はそれぞれの話が繋がっているのは、

悔しいくらい。

 

加えて、陣内の愛すべきキャラクター。

突然、レンタルビデオ屋の店員に告白をして、ふられて

その一部始終を見に来るように連れてきた友人に向かって

「君たちの期待にこたえられなかったことが何よりもつらいよ」

と言ってみたり

「俺が失恋したんだから世界は時間を止めるべきだ」と言ってみたり。

 

非行少年のことを

「ダメなやつはどうやったてダメだ。更生させるなんて奇跡みたいなもんだ」

と言うおじさんに向かって

陣内は、「俺たち(家庭裁判所調査官)は奇跡を起こすんだ」と言う。

かと思ったら、

「こんなもの適当に調書作らなきゃやってられない」と言ってみたり。

 

もう、本当にめちゃくちゃ。(笑)

でも、この陣内と言うキャラクター、わたしはとても好きです。

本当にいたら絶対友達になりたい。

 

そして、陣内の友人として、目の見えない青年が出てくるんだけれど、

彼の視点から描いたお話は、視角を取り払ったストーリー展開で、

またおもしろい。

 

この目の見えない青年は、目が見えないと言うだけで、

まわりから同情を買って、

年配の方からいきなり「何かに使って」とお金を渡されたりするらしい。

それを見た陣内は、「お前だけもらうなんてずるい!」と言って、

お金をくれたおばさんを追いかける。

 

そして、陣内の職業である家庭裁判所の調査官

(家裁の調査官と言うのが一般的)は

主な業務は家庭内の事件の調停のための調査と、

あとは主に少年事件にまつわる調査や面談。

わたしも昔、家裁の調査官になりたいと思っていたことがあって。

(たまたま、神戸殺傷事件とか14歳の犯罪が全国的に話題になった時の

14歳で、その影響で当時NHKで「少年たち」と言う

家裁調査官のドラマをやっていた影響もあるかな)

 

職業的な魅力が分かるからこそ余計にユニークに感じるのかもしれないけど。

わりと堅い職業だけど、こんな人がいたらいいなあ、なんて。

(めちゃくちゃすぎて本当にいたらダメかもだけど)

やっぱりなりたかったかも、なんて思うような、そんなお話でした。

 

読みやすいので、すぐに読めると思います。