闇の子供たち

「闇の子供たち」(2008年 日本 坂本順治監督)

 

言葉がないほどに、重く、酷い。

 

内容は、あらかじめ分かっていたから、

それなりに覚悟はしていきましたが、

 

この映画を観ている途中、映像の生々しさで、

映画館の席で思わず吐き気を覚えるほど。

知人は、途中で席を立ってしまった、と言っていました。

 

この映画の舞台は、タイ。

北部にある、貧しい山岳地帯の家から、都市部へと、子供が売られていく。

親は、そのお金でテレビや冷蔵庫を買うけれど、

自分の子供は都市へ働きに行くと思っている。

その先にあるのは、日本や欧米から観光客が集まる売春宿。

そこで働く子供にエイズが出ると、もっと環境の悪いところへ

売りとばしたり、ごみと一緒に捨てたりしてしまう。

 

ある日本人の難病の子供を持つ親が、多額のお金を払って

海外で臓器移植をするという。

もちろん、日本では子供の臓器移植は禁止されている。

その情報を嗅ぎつけた日本の新聞社がその実態に迫っていくというお話。

 

もうね、本当に酷い、悲惨。

 

普段ね、売春とか聞くと、何て言うか、こう卑猥な類のもので

女子高生が、おっさんにお金をもらって、

(もちろんこれも絶対だめで、売る方も悪いけど、

それを売れると言う需要にした大人は最悪)

と言うようなもの。

この感覚自体も疑ってしまうけれど、

まだ子供のような青少年を性的対象とすることは異常だと思うんだけど

 

映画に出てくる売春は、6歳だの、8歳だの。

性と言う言葉を使うにはあまりに幼すぎる。

何も分からないまま、報酬もないまま(そういう問題じゃないけど)

ひたすら、大人の性の相手をさせられる。

ホルモン剤を打たれた挙句に死んでしまった子供を前に

裕福な海外旅行客は、売春宿に多額のお金を払って解決する。

 

映画の中でテーマになった臓器移植にいたっては、

生きている子供から臓器を摘出すると言う。

 

「人権」なんてものは存在しないよね、ただの生物。

値段のついた命。

 

フィクションの部分もあると思うけど、

実際ね、子供ってネットとかでも本当に買えてしまうらしい。

 

調べていくと、例えば、経済力のない女の人なんかで

男の人から種をもらっては子供を産み、

生まれては子供を売る、なんて現実もアジアにはあったり、

災害が起きた後の難民キャンプから、子供が数百人消えて、

さらって売りとばしたのは、関係者だったり。

 

映画に出てくるタイ人のバイヤーも、子供に殴るける、弄ぶなど

やりたい放題で。

ただ、原作を読んだときに、バイヤーの彼の過去があって、

彼もまた、路上のゴキブリを食べているような貧しい暮らしで、

大人に体を売るのは生活のためだった、って生い立ち。

そんな子供が、大人になった途端に、人権とかについて

奮い立てるはずがない。

子供を集めて、売春をさせている人だけが悪なのかな。

 

実際、多くの日本人がこうやって、子供を買っている。

わたし含め、日本人て、道徳とか倫理とかそういうのちゃんと学べて、

一応は、何が良くて、何が悪いかを知って大人になる。

だから、母親・父親の児童虐待なんかはすぐにニュースになるし、

育児にも関心が高い。

でも、わずか地図上で数センチほどの国で

日本人が何をやっているかも知らないんだよね。

アメリカよりも、ずっと近い国のこと。

 

裕福な子供は親が必死に稼いだ何千万と言うお金をつぎ込まれて

病気から救われるほど愛されて

貧しい子供は、親が生きるためにお金にされて、人権を失う。

こんな現実が世界にあるなんて、認めたくないし、目をそむけたい。

 

この映画が投げかけたいのは、「知る」って言うこと。

多分ね、こう言う映画を観ると、正義感の強い人は「こんなの絶対いけない!やめさせなきゃ!」

って思うと思うんだよね。

でも結局なんにもできない。あまりに組織的に大きすぎて、

水面下すぎて、長い歴史があって。

 

映画に出てくるボランティアの女の子は、臓器移植を止めようと必死に動いて、

その「ひとり」の命ですら救いたくて。

新聞社の記者は、今これを止めるんじゃなくて、この事実を伝えることで

その裏にある組織を暴かないといけないと言う。

 

そりゃあ、世界中から権力者や大富豪1000人くらい集めて

「あなたたちは、次に生まれ変わるときに、

タイの○○地区に生まれて売春宿に売られますね」

なんて、ノストラダムスみたいな人が占いでもすれば、

みんな生きているうちに何とか根絶させようと

権力とお金で何とかするかもだけど。

 

たいていの人には何もできない。

ただ、これを知る、知らせていくってすごく大切なことだと思う。

 

この映画を撮るにあたり、タイでのロケが大変だったり、

ここに出てくるタイ人の子役たち、もちろん俳優だからみんな裕福な子たち。

でも、日本人が何を撮りに来たか、ちゃんと知っているんだって。

だから、あんな表情ができる、と。

日本人の子役にはとてもできないよね。

 

今、この瞬間もこうやって苦しんでる子供たちがいるとして、

戦争でもなく、自然災害でもなく、日本人とか欧米人の欲求のために、

苦痛だけの中で、

一生を幸せと言う感覚を知らないまま死んでいく子供たちがいたとして

その子たちが「日本なんて滅んじゃえばいい」と願ったその願いで

日本が滅んでも、何も言えないような気がする。

 

内容があまりに重くて、映像もかなりきついので

心を強く持てない人にはお勧めできませんが、

機会があるなら、ぜひ観てほしいです。