希望の国

希望の国   (2012年 園子温監督)

 

 

「すごい」映画だった

 

というのが素直な感想。

 

いい映画、とは言えないけれど

(良かったなんて軽く言えない、というのが適切な感情)

それでも、できるだけ多くの人に観て欲しい、と思った1本。

 

 

 

物語の舞台は、架空の県「長島県」のとある町。

その町には原子力発電所(原発)があります。

 

また、3.11東日本大震災よりも未来の日本。

 

田舎の町で、平和に暮らす人々。

 

しかし突如、大地震がその町を襲います。

 

地震による直接の被害(倒壊や荷物など)からの安全を確認してしばらく後、

原発20キロ圏内からの退避命令が出されます。

 

主人公となる家族の家は、原発からちょうど20キロ。

家の庭に嘘のような立ち入り禁止の柵が立てられる。

 

隣の家(20キロ圏内にある隣の家)の人たちは、

その日のうちに、強制退避。

敷地が20キロの境界線にあり、

家屋が数メートル圏外に出たその家族に退避令は出なかった。

 

若いお嫁さんが叫ぶ

「放射能って空気なんでしょ!?お隣は避難して

 ウチは大丈夫なの!?」

 

また、福島原発事故から数年後という設定なので、

退避令が出て避難するバスの車内で叫ばれる

「福島の時を忘れたのか?もう一生家には帰れないんだよ」

 

翌日、その家族のおじいちゃんは、

若い夫婦に家を出て行くようにきつく言い聞かせます。

 

これから子どもを産んだりすることなどを考えると、

子どもへの放射能の影響を考え、

若い夫婦は家を出て行くことを決意します。

 

もちろん、「家族一緒に行こう」と提案するも、

老夫婦は「もう年寄りだから、放射能なんか怖くない」と

住み慣れ親しんだ、土地、家に残るといい、

家族は離れ離れになってしまいます。

 

その後、若い夫婦に授かった子どもへの影響の懸念、

おじいちゃんが大切に育ててきた牛への殺処分命令、

最終的に下された老夫婦への退避令での役場の人とのやり取り

を軸にお話は進んでいきます。

 

 

 

どんなふうに表現すれば言葉が足りるだろう、

わたしのように、同じ日本人でありながら、

普通に暮らせてしまっているような人間に、

何かを言う資格なんてないような気がしますが、

とても悲しく、そして悔しくも思うのが

言葉足らずの感想です。

 

東日本大震災については、その甚大な被害を受けて、

とても心を痛めて、実際に、何かできないかな、と

行動を起こした人も多いと思います。

 

わたしも、被災地ボランティアへは何度か足を運びましたが、

その裏で起きていた、自然災害ではなく人為的被害を知らずに、

「頑張ろう東北」と前を向いてしまってしまったことにすら

恥ずかしいほどの気持ちになりました。

 

以前に、ここの感想文にも書きましたが、

「闇の子どもたち」という映画を観て、

世界で行われている、幼児の人身売買について、

知らないことは罪だ、という表現がありましたが、

今回、同じようなことを思い出しました。

 

そしてそれが、

日本という、自分の住んでいる国、

こんな事態になるなんて思いも知らなかった平和な国、

日本国内で起きていることがとても悲しく、

そんな地域を作ってしまったこと自体、

言いようもない気持ちになります。

 

このような地域ができてしまったことは、

世界的にかんがえても、あまり例がなく、

(チェルノブイリと日本くらい)

皮肉なことに、サンプルをとるために、

世界からいろいろな研究者が集まってきているのだとか。

 

 

以前に、震災後の福島の観光地の活性化を応援する団体の方が

「じわじわと、ゆっくり、首を絞めつけられている状態」

という表現をしていましたが、

それって最悪に苦しい状態になるのを、気付かずに生きている状態

みたいなことですよね。

 

 

この作品に出てくる長島県という架空の地名は

長崎・広島・福島の意を込めてあると何かで読みました。

 

また、この作品を作成するに当たり、

被災地へ取材に入った監督が出会った、

この作品のモデルとなった家族がいるそうですが、

作品が完成して、まず一番最初に、

この家族のところにホームシアターセット(のようなもの?)を持って行き、

観ていただいたそうですが、

「とてもハッピーエンドにはできなかった。

 申し訳ありませんでした」

と監督が泣いたそうです。

 

 

あと、個人的な感想ですが、

最終的に、ものすごく甚大で大きな危険や被害、

怖いものに直面した時、

助け合う、守り合うのは、国でも制度でもなく、

やはり家族なんだと、改めて思い知らされたような気がします。

 

 

 

できれば、この作品は1人でも多くの日本人に

観ていただきたいな、と思いました。